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 近年、免疫系は本来の病原体を排除するという役割以外にも、がん、アレルギー、生活習慣病、線維症だけでなく多くの疾患の発症や増悪に深く関わっていることが分かりつつあり、その重要性について認識されています。また、この免疫システムを上手に制御することにより、これまで全く治らなかった疾患に対しても画期的な治療法を確立することが出来るようになってきています。しかし、免疫系に関わる細胞や分子、それらが織りなす現象はまだその多くが明らかになっていません。

 その免疫系の中でも、私達はこれまで自然免疫システムについて研究を行ってまいりました。研究を開始した当初は、研究室ではToll-like receptorやRIG-like receptorを始めとした自然免疫受容体とそのシグナル伝達経路の仕事が精力的に行われておりました。私もシグナル伝達経路の研究にも携わりながら、徐々に自身の研究テーマの探索を行い、当初はラボで人気の無かったマクロファージのテーマに行きつきました。当時、このマクロファージはこれまで体内には1種類しかなく、体内の不要物を貪食して処理することのみがメインの機能であると考えられていたのですが、私達の研究により生体には複数のマクロファージサブタイプ(細胞の多様性)が存在し、各々が疾患ごとに異なる役割を持っていることを世界に先駆けて明らかにしてまいりました。これまでアレルギー、メタボリックシンドローム、線維症についてマクロファージを切り口に研究を行って参りましたので、これからは標的疾患を拡張し、研究を展開していきたいと考えております。更に、これまでの細胞を分類するノウハウをマクロファージだけでなく様々な免疫細胞へと応用し、細胞のダイバーシティをキーワードに新たな研究分野を開拓していきたいと思っております。また、これまでこれらの研究シーズの応用として創薬化にも力を入れてきました。私達が得られた知見や研究データから、未だ治療法がない病気に対する新たな制御法の開発を目指して、社会に貢献できればと願っております。

 最後になりましたが、研究という世界は専門分野・経験・学歴・年齢を一切問わず、興味があるならどんな人でも、世界でまだ解き明かされていない現象を初めて発見できるチャンスがある希望あふれる世界です。HPのトップに「を科学する集団。」と記載しました。このの中を決めるのはラボで研究する皆さんです。研究に興味があるかたは、是非、私達の教室に立ち寄ってみてください。

 

東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 免疫学分野
佐藤 荘